BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』

2024/10/25 09:00

週刊BCN 2024年10月21日vol.2034掲載

AIをめぐる天才たちの覇権争い

 IT業界を席巻している生成AI。その代名詞ともいえる「ChatGPT」を開発した米OpenAI(オープンエーアイ)のサム・アルトマン氏と、その周辺の人々の動きを時系列で追っている。大規模言語モデル(LLM)の開発にあたって、当初は非営利を目指していたこととその意図、イーロン・マスク氏の関与と混乱、米Microsoft(マイクロソフト)から出資を受けるようになった経緯、そして生成AI発展の原理などを分かりやすく解説している。

 アルトマン氏をめぐっては、オープンエーアイ社内で解任騒動が起きるなど話題に事欠かないが、彼を中心とした米国のビックテック企業のし烈な生成AI開発と覇権争いは、目覚ましいLLMの性能向上の背景と捉えると、とても興味深かった。

 オープンエーアイが最終目標とする「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」について、著者は厳密な定義は存在せず、一般には「人類と同等あるいは人類を凌ぐ高度な知能を備えたAI」と捉えられていると説明する。現在公開されている同社の最新LLM「GPT-4o」の次のモデルについて、LLMに推論能力を持たせ独創的な理論構築を成し遂げることを目指すという。ますます加速しそうな性能の進化から目が離せない。(緑)
 


『イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマン』
小林雅一 著
朝日新聞出版 刊 1980円(税込)
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