憧れの遺物

　学生時代、バイト代を貯めやっとの思いでデスクトップPCを購入した後、次に憧れたのはiPodだった。しかし、学費も生活費も自分で負担していた身にとってはなかなか手が出せず、結局、格安の模造品に落ち着くことに。そして、それもすぐに壊れてしまい、買い直すこともないまま大学を卒業した。

　地元で社会人となり、財布に余裕はできたが、移動が自家用車中心となり、車内オーディオがあるため、ポータブルプレイヤーは不要に。都内に引っ越し、徒歩や電車での移動になると、iPodの役割はiPhoneなどのスマートフォンとサブスクリプションサービスに代わられ、結局手にすることはなく今に至っている。

　ITの文脈で言えば、iPodはiPhoneの源流の一つであり、社会を変えた存在だ。音楽史の観点では、聴取体験に「シャッフル」という文化をもたらしたとされ、大きな影響を及ぼしたという。

　歴史に名を残すデバイスであるが、現在は人々の記憶から失われ、遺物となりつつある。ただ、スマホで十分となった現代でも、使いやすいUIやスタイリッシュな外観は魅力的であり、ガジェットとしてiPodに愛着のある人は少なくない。記者も若い頃の憧れを取り戻してみようか。（無）
 

由来
2001年10月23日、アップルがHDD内蔵型デジタルオーディオプレイヤーのiPodを発表した。液晶画面とホイール操作機構で構成されたシンプルなデザインなどで人気を博した。派生機種を経て、22年5月に販売を終えた。