BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『ラストキャリア』
2024/10/18 09:00
週刊BCN 2024年10月14日vol.2033掲載
熱狂的な支持を集める漫画家とは
カリスマとして思い浮かべる漫画家は、人それぞれだろう。特に世代による違いは大きいはずだ。本書では、白土三平、つげ義春、吾妻ひでお、諸星大二郎を取り上げている。いずれの作家も若者の心や社会の空気を的確につかんだことで、熱狂的な支持を集めた。多数のクリエイターにも影響を与え、指導者的な役割を果たしたため、カリスマと呼ばれているようだ。
4人の漫画家はまったく違う作風を持つが、共通するのは、とがった考え方と表現を追求した点だ。例えば、吾妻ひでおは二次元の創作物の価値を、本物か偽物かといった議論を超えた領域に見いだし、二次元だからこそ到達できる現実とはかけ離れた表現を展開した。キャラクターに対しても二次元の存在だからこそ意義があるとする姿勢は、初期のオタク文化を支える考え方となったが、当時としては特異な存在であったようだ。
本書を読んで感じるのは、カリスマは時代とともに生まれるということだ。独自の視点から時代との向き合い方を提示する表現が熱狂的なファンを生み出し、読者はそこから人生についての考え方を深めていく。自分にとってのカリスマ的な漫画家とは誰だろうと考えてみるきっかけになった。(石)
『漫画のカリスマ 白土三平、つげ義春、吾妻ひでお、諸星大二郎』
長山靖生 著
光文社 刊 1034円(税込)
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