▼10月1日、自民党の石破茂・新総裁を首相とする新たな内閣が発足した。ここ数週間、政治のニュースは誰が次の総裁になるかの話題で持ち切りだったが、脱派閥が掲げられた総裁選挙であったにもかかわらず、耳目を集めたのは”キングメーカー”と呼ばれるような大物政治家の動きなど「政局」が中心で、「政策」本位の議論が活発に行われたと言えるかは疑問だ。

▼総裁選の中で争点の一つとされたのが、12月2日以降は現行の健康保険証の新規発行を廃止し、いわゆる「マイナ保険証」に一本化するという方針だ。石破首相はかねて、マイナ保険証への一本化時期の延期にも含みを持たせる発言をしていたが、新たに就任した平将明・デジタル大臣は、予定されている日程通りに進める方針を示した。

▼マイナ保険証をめぐる議論も、政争の具にされてきた感がある。「あくまで任意」と強調されてきたマイナンバーカードの取得を実質的な義務へ近づけるやり方への反発は理解できるが、保険証のなりすまし利用など、現状の問題を放置していいとも思えない。政策決定は党派性に動機づけられるのではなく、メリット・デメリットを冷静に見極めた上で行われるべきだ。（螺）