BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『危険だからこそ知っておくべきカルトマーケティング』
2024/09/13 09:00
週刊BCN 2024年09月09日vol.2029掲載
熱狂を生み出す組織の構造とは
米大統領選挙が近づいてきた。報道では政策論争だけでなく、分断をあおる強いメッセージで陣営の結束を強めようとする一部の動きも伝えられている。集会で対立候補への憎悪をむき出しにする支持者の姿からは、ある種の熱狂や陶酔が感じられる。暴力の応酬にもつながりかねない危うい状況は見るに堪えないが、人間がアクションを起こすにあたり、敵意や対立が強い原動力になるという現実は認めざるを得ない。本書の著者は、以前の日本の国政選挙において、ある新興政党が選挙運動の中で群衆の熱狂を巧みに利用していたことに関心を持った。メッセージングによって支持を拡大しようとする取り組みは一種のマーケティングと言えるが、このような熱狂を軸とする“マーケティング手法”は、過去にカルト宗教が伝道に用いてきた方法論と共通する部分があるという。「共通敵を設定し、教義と個人を接続する」「教義から金と労働力を引き出す」といったものがカルトのセオリーだが、これらは人の行動原理に基づくものである以上、企業のブランディングなどにも応用可能な部分がある。顧客やファンを相手にする仕事の質を高めるため、そしてカルト的な手法に取り込まれないために、そのメカニズムの解明に挑む意欲作と言える。(螺)
『危険だからこそ知っておくべきカルトマーケティング』
雨宮 純 著
ぱる出版 刊 1650円(税込)
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