BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『アニメオタクの一級建築士が建築の面白さを徹底解剖する本。』

2024/08/30 09:00

週刊BCN 2024年08月26日vol.2027掲載

より深く作品を味わう

 アニメや漫画などに登場する建物は、その作品の世界観を構成する重要な要素の一つだ。著者はフィクションの中でも、実在する建物が参照されている場合が多いといい、さまざまな作品の舞台となる建物の特徴を挙げながら、建築技術がどのようにかっこよさや不気味さ、面白さといった多様な印象を作り出しているかを解説する。

 例えば、建築家のル・コルビュジエが唱えた「独立骨組みによる水平連続窓」などの五つの原則を踏まえた建築様式はモダン建築の代表とされ、シンプルで開放感のあるおしゃれさを特徴とする。現代を舞台にした作品の中で、これに準拠した建物に住んでいるか、逆にかけ離れているかで読み手に伝わる登場人物の印象もかなり変わるはずだ。建築に関する技術や、その背景にある思想を知れば、より深く作品を味わうことができるだろう。

 散歩していると、世の中にはさまざまな意匠を凝らした建物があると感じる。個性的なデザインを持つ一軒家やマンションが目にとまり、それらをつぶさに見ていると、その街が持つ雰囲気が伝わってくる。本書で得たさまざまな知見を携えて街に出てみれば、いつもとは違った見え方がするかもしれない。
(石)
 


『アニメオタクの一級建築士が建築の面白さを徹底解剖する本。』
NoMaDoS 著、吉川尚哉 絵
彩図社 刊 1980円(税込)
  • 1