BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『冷戦後の日本外交』

2024/08/09 09:00

週刊BCN 2024年08月05日vol.2025掲載

政治家を支えるもの

 政治家の回顧録は面白い。過去の政治的事象について、その結果に至った経緯や要因を「答え合わせ」するかのように振り返ることができる。もちろん、回顧録とはその個人の視点によるものであり、留保なしに受け入れるべきではない。しかし、少なくとも各場面で当人がどのように思索・判断し、現時点でどう受け止めているかを知ることはできる。

 本書では、自民党副総裁や外相を務め、外政・安全保障分野で活躍した高村正彦氏が、冷戦後の日本外交の舞台裏を専門家との座談会形式で回想している。米ソによる二極体制の崩壊後、「右か左か」というイデオロギーに基づく論争を超え、より現実の国際社会に立脚した外交の構築に腐心した高村氏の言葉を通じて、外交への理解がより深まるように思う。内政についても興味深いエピソードが並び、政治に関心がある人なら面白く読めるだろう。

 全体を通じて印象に残るのは、サイレントマジョリティへの信頼である。直接的に政治的な発言・行動をしない有権者こそ国民の大多数であり、その理解や支持を得ることが、政治家としての役割だと認識しているように見える。選挙区の有権者との積み重ねがそうさせているのだろうか。政治家を支えるものの一端に触れた気がする。(無)
 


『冷戦後の日本外交』
高村正彦、兼原信克、川島真、竹中治堅、細谷雄一 著
新潮社 刊 1705円(税込)
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