BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『町内会――コミュニティからみる日本近代』

2024/08/02 09:00

週刊BCN 2024年07月29日vol.2024掲載

町内会の本質は「共同防衛」にあり

 転居してきた人にとって「町内会」と言えば、町内の草むしりや掃除などを要求され、会費も請求してくる存在。入会を断ると一部でゴミ集積所の利用を拒否されたり、回覧板を飛ばされたりすることもあるという。

 本書では、近代の町内会の本質は「共同防衛」にあり、内外の「敵」を排除するために「全戸加入」を原則としていると指摘。町内会は、地域における防犯や防災などの主体との位置付けもあり、一概に悪者扱いはできない。ただ、最近は入りたがらない人が増えているといい、時代に合わせた変化は必要だろう。

 著者によると、町内会は有力者を通じて住民を統制する道具として都合がいい面もあるようで、第二次世界大戦期では戦争遂行のための相互監視、翼賛組織として機能したと分析する。このため敗戦後は米国の占領軍によって町内会は廃止され、復活した後は行政と町内会との表だっての蜜月関係は見られなくなった経緯がある。

 とはいえ、山間部の集落や離島など消防や警察といった行政サービスが十分でない地域では、消防団との連携や見回りなどで重要な役割を果たしている側面もある。町内会の歴史や今後のあり方を学ぶ一冊だと言える。
(寶)
 


『町内会――コミュニティからみる日本近代』
玉野和志 著
筑摩書房 刊 924円(税込)
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