BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

2024/07/05 09:00

週刊BCN 2024年07月01日vol.2020掲載

人生はもっと豊かになるかも

 小学生の頃、読書とは縁遠い生活をしていたが、ひょんなことから校内の図書館にいた司書と仲良くなった。お勧めの本を教えてもらい、1週間ほどかけて読み、返却するときに別の本を紹介してもらう。このサイクルを繰り返し、国内外の名作と言われる本を多く知ることができた。

 社会人になると、帰宅時にはくたくたの状態で、読書をする余裕はない。引っ越しの際、それなりの冊数になった紙の本は、非常に重い荷物と化して扱いに難儀する。言い訳を並べたらきりがないが、とにかく読書から離れているのは間違いない。

 本書では、文芸評論家である著者が、主に自分の好きな本が読めるようになった明治時代以降の日本人と読書の関係などを解説する。特に、少し前は娯楽だった読書が、今では情報を得る手段になりつつあるとの指摘は自分にも当てはまるし、多くの人が共感するだろう。

 時代によって読書のあり方は変化しているが、本を読むことで語彙力を高めたり、教養を身につけたりできるのは変わらないと言える。本書が示すコツを実践し、再び読書の習慣を取り戻せば、もしかしたら人生はもっと豊かになるかもしれないと感じた。(鰹)
 


『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅香帆 著
集英社 刊 1100円(税込)
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