▼東京都知事選が告示された。選挙戦の盛り上がりとは別に話題となっているのが、ある政党による選挙ポスター掲示枠の「販売」行為だ。政党に数万円を寄付すると、掲示板１カ所に独自のポスターを張れる権利が得られる。この党からは24人が立候補しており、１カ所につき、最大24枚のポスターを掲示できるようだ。

▼自宅周辺の掲示板では、購入者がいなかったのか張られた様子はなかったものの、都心部では同じポスターが大量に並んだ掲示板を見かけた。公職選挙法上では問題がないそうだが、違和感を覚えるとの意見は、個人的にも同意できる。

▼技術の進歩もこういった行為の実現性を高めた要素だろう。一般的なオフセット印刷は、小ロットでは１枚あたりの単価が高いが、デジタル印刷の普及によって、極小枚数でも手軽に刷れるようになった。寄付もＷｅｂを通じて簡単に募ることができる。

▼今回の件で公選法を見直すべきとの声もあるが、いたちごっこに終わる可能性もある。どれだけ技術が向上しようとも、最後に求められるのは人間の倫理観だという事実は、いつの時代でも変わることはないのだろうか。（無）