BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『昔は解けたのに…… 大人のための算数力講義』
2024/06/28 09:00
週刊BCN 2024年06月24日vol.2019掲載
大人になったからこそ
昔から算数が得意ではなかった。特段に「嫌い」という感情はなかったが、かといって国語や社会、理科などと比べると「楽しい」という感情はわかず、淡々とこなしていた記憶がある。中学生になって「数学」になると、さらに理解が難しくなった。計算だけならまだしも、図形や確率などになってくると手に負えず、高校の後半にはすべてを諦めて文系教科に特化したコースを選んでしまった。しかし、社会人になると、数学的な素養が求められる機会は意外に多い。統計や確率はデータ活用が求められる現代のビジネスにおいては欠かせなくなっている。「あのころもっと真面目にやっておけばな」と後悔したことは数知れずある。再学習に向け、まずは算数からやり直すのも悪くないだろう。
ページをめくり、基礎の説明や例題に触れるとなぜだか楽しくなってくるから不思議である。子どものころは、算数的な思考の意味や、必要性が実感できず、テストのために出されたものをただ飲み込んでいただけだったのだろう。著者は「やり方の暗記だけで誤魔化す」手法では、応用が効かず無意味だと繰り返し指摘する。大人になったからこそ、その言葉を実感できる。
(無)
『昔は解けたのに…… 大人のための算数力講義』
芳沢光雄 著
講談社 刊 1320円(税込)
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