▼出張で全国各地に行く機会が増えている。飛行機や新幹線などで現地に向かうが、目的地の交通機関では、それまで使えていた全国交通系ICカードが使えないことがある。普段、当たり前のように利用している立場からすると不便さを感じるものの、閑散とする車内の状況を見ると仕方ないとも思う。

▼閉ざされた環境で独自の進化を遂げた状態を「ガラパゴス化」と言うようになって久しい。日本の携帯電話が最たる例で、交通系ICカードが採用している国産の近距離無線通信技術「Felica」も、同じ道をたどるのではないかと指摘する声が以前から上がっている。

▼熊本県を走る電車や路線バスで、交通系ICカード向けのサービスが、クレジットカードなどのタッチ決済に変更される見通しとなっている。運行事業者は、利便性の向上に加え、機器の更新費用が約半減することを理由として挙げている。

▼Felicaは高速な処理が可能な点などが強みだが、世界では別の近距離無線通信技術の規格が普及している。いくら性能が良くても、費用対効果が見合わなければ、採用の見送りや廃止につながってしまう。ビジネスの難しさを改めて感じた。（鰹）