北斗七星
北斗七星 2024年6月17日付 vol.2018
2024/06/21 09:00
週刊BCN 2024年06月17日vol.2018掲載
▼近所にあった個人経営の書店が、また一つ閉店した。出版不況の中、電子書籍やライセンス事業などへのシフトの余地がある出版社以上に、書店の経営環境は厳しい。書店のマスターデータを管理している日本出版インフラセンターの統計によると、2003年に2万880店だった書店の総店舗数は、23年には1万918店まで減少した。
▼1店舗あたりの平均面積は拡大を続けていることから、小規模な書店の廃業が進み、大型店へ集約化される傾向が見て取れる。最も身近な文化の担い手である「町の本屋さん」が消えていくのは寂しいが、小売店の集約・大型化はこれまで食品、日用品、衣料、家電などあらゆる商品で見られた動きであり、文化産業といえ逃れることはできない。
▼先日、出張先でサブカルチャーに特化した書店を発見した。狭い店内には、レトロ文化、廃墟や遺構、アングラ業界のルポなど、ニッチなジャンルごとに特化した棚が設けられ、新刊、古本、同人誌が区別なく並ぶ。作家を招いた催しも頻繁に開催しているという。怪しくも魅力的な空間に捕らえられ、久々にビジネス書でない書籍を買い込んだ。小規模な流通事業者の生き残りのヒントを見た気がする。(螺)
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