BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『「わからない」人のための現代アート入門 どう見る?どう感じる?何を見つける?』
2024/06/07 09:00
週刊BCN 2024年06月03日vol.2016掲載
社会の変化を映す芸術
「現代アートは難しいという」というイメージを持つ人は多くいるだろう。その一因としては、古典的な作品と比較して鑑賞方法の歴史的な積み重ねが乏しいため、楽しみ方が分かりづらいという事情がある。しかし、最新の芸術をリアルタイムで体験できるのは、同時代に生きる人の特権であるため、簡単に遠ざけてしまうのはもったいない。本書は1980年以降の芸術の動向を、観賞のこつも交えて解説する。80年で区切るのは、戦後の復興から明るい未来を期待できた経済成長期を経て、格差や公害といったさまざまな問題が噴出したことで、右肩上がりに成長していくという世界観を期待できなくなったことが転換点だと捉える。こうした社会情勢の変化は、芸術の世界にも反映されているといい、逆に芸術の鑑賞を通して作品が生まれた時代の特徴を知ることもできるとする。
現代アートを見るには、美術館に出掛ければいい。ただ、作者は「辺縁エリア」と呼ぶ、街の中心部から外れた場所にあるギャラリーや展示場に、実は面白い作品が多いという。コンクールなどで一定の評価が定まっていない、原石のような作品に出会えるからだ。読後は現代アートを探しに足を伸ばしてみるのも良さそうだ。(石)
『「わからない」人のための現代アート入門
どう見る?どう感じる?何を見つける?』
藤田令伊 著
大和書房 刊 1980円(税込)
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