BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『サイゼリヤの法則』

2024/05/31 09:00

週刊BCN 2024年05月27日vol.2015掲載

顧客のために「安くておいしい」を追求

 疲れて、ごはんを作るのが無理となった時、「サイゼリヤ行こうか」と家族に提案するとみんな大喜びする。値段を気にせずに食べたいものを注文しても、お財布に優しい。貴重なレストランである。

 本書は、サイゼリヤ創業者が、なぜビジネスがうまくいったのかを解説している。物価高の昨今、どこも値上げばかりなのに値上げせず、むしろ値下げしている商品もあるという。「なぜこんなに安くできるのだろう」という疑問があり、興味深く読んだ。

 国内外1500店舗、年間客数2億人の巨大イタリアンチェーンは、お金をもうける気がないのだという。利益があまりないのでフランチャイズはせず店はすべて直営だ。「安くておいしいほうが、お客さんが幸せになるから」。そのために徹底的に無駄を省き、製造業の現場のようにあらゆる作業を科学的に合理化。一般的に飲食業では低いとされる生産性を劇的に上げている。

 飲食チェーン経営の枠組みにとどまらず、著者は仕事や生きる上で大切にしているメッセージを本書に込めている。自分のためではなく人のために動く「利他」の重要性がとても印象に残った。サイゼリヤは10年後に世界で1万店舗展開を目指す。近所の店舗で飲食し、微力ながらその大きな志を応援したい。(緑)
 


『サイゼリヤの法則』
正垣泰彦 著
KADOKAWA 刊 1650円(税込)
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