▼電話口で親族や金融機関などと偽り、キャッシュカードをだまし取ったり不正な送金をさせたりする特殊詐欺が後を絶たない。警察庁が公開している情報によると、2023年の特殊詐欺の認知件数は1万9000件余りに上り、被害総額は440億円を超えたという。

▼最近報道され話題となったのが、警察官を名乗る人物からの「保釈金が必要」という電話にだまされ、お金を振り込んでしまったという事件だ。発信元として表示された電話番号の末尾が「110」だったことから、被害者は本物の警察署からの連絡と信じてしまったという。

▼メールやSNSなどと異なり電話の発信元は正しいと考えてしまいがちだが、実際には一部のIP電話サービスや転送業者などを介することで、番号の書き換えが可能だ。さまざまな場面において、相手が誰か、そして自分が何者であるかを正しく証明するのは、技術的にも制度的にも常に難しい課題である。

▼本人確認手段の切り札として登場したのがマイナンバーカードだが、現状あまり活用は進んでいないどころか、偽造カードの悪用例も報告されている。使い勝手を高め、社会の安全に寄与するようになってほしい。（螺）