BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『移動する人はうまくいく』

2024/05/17 09:00

週刊BCN 2024年05月13日vol.2013掲載

考える前にまず場所を変えてみる

 会議やイベントの多くはオンラインで代替できることを私たちは知ったはずだが、それでも多くの人がお金と時間をかけて再び出張をするようになっている。画面越しに比べて対面のほうが深いコミュニケーションをとれることは当然だし、訪問先の企業の様子を知れるなど、得られる情報の量も多い。ただ、このように言語化可能なメリット以外にも、長距離の移動を重ねると、自分の中に何かの“経験値”がポイントとしてたまっていくような感覚がある。

 本書は、考えてばかりで動けない自分を変えたい、という人たちに向けた指南書だ。このテーマ自体は凡庸だが、著者はその方法論として「移動」を勧める。誰しも「変わりたい」とは思っているが、その意思だけで自らを変えるのは難しい。そこで、強制的に周りの環境が切り替わる移動の機会を増やせば、結果として自分の行動が変わっていく。目的がなくても移動すること自体に価値があるとし、終章には“移動体質”を身につけるための「役立たないものに触れる」「見切り発車する」などのアクションプランが列挙されている。対面とオンラインの使い分けで効率化を、と言われる昨今だが、非効率でもとりあえず足を運ぶことが、将来の利益につながるかもしれない。(螺)
 


『移動する人はうまくいく』
長倉顕太  著
すばる舎 刊 1650円(税込)
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