BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『夜更かしの社会史 安眠と不眠の日本近現代』

2024/04/26 09:00

週刊BCN 2024年04月22日vol.2011掲載

眠りは誰のためか

 ここ何年か、睡眠をめぐる問題を抱えている。寝つきが悪く、眠りが浅く、もちろん朝の目覚めも最悪で、非常に難儀している。どうにかしなければと思いつつ、なすがままという現状だ。

 布団の中で「別に夜に眠る必要もないではないか」とぼんやり考える。とはいえ記者である以上、日中は仕事をしなくてはならない。夜に眠るのは、個人の問題ではなく、社会に起因しているとも考えられる。

 本書は近代以後の日本社会で「安眠」と「不眠」が社会の集合的な営為としていかに意味づけられ、実践されてきたかを掘り下げている。テーマは多岐にわたり、産業、労働、消費・娯楽、育児、学習など、多彩な切り口から、眠りと社会、時代が密接に関わっていることを明らかにする。

 現代はテクノロジーによって睡眠の質が可視化され、よりよい「パフォーマンス」を生むために効率的・効果的にマネジメントすべきものという認識が広がりつつあるという。理屈はわかるが、いよいよ一体「誰のために、何のために眠るのか」という気もしてくる。

 多様性が認められる時代だ。眠りのあり方が尊重されてもいい。ひとまず、記者が日中に大あくびをしていても、寛大な心で許してほしいところだ。(無)
 


『夜更かしの社会史
 安眠と不眠の日本近現代』
近森高明、右田裕規  編
吉川弘文館 刊 4180円(税込)
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