▼先日、東京・武蔵野市にあるNTT技術史料館を訪れた。同社が最先端の光通信技術やネットワークの制御ソフトウェアなどを開発している拠点の傍らに設置されている施設で、日本の電話サービスと技術の歴史に関するさまざまな史料を展示している。

▼展示物の豊富さは圧巻である。天井まで届くラックに機器が満載された1960年代の電話交換機は、電磁石で制御される膨大なスイッチの1個1個に近づいて見ることができる。これらが一斉に電話局内で音を立て動いていた当時の風景が思い起こされ、どれだけ大規模な現代のデータセンターとも比較にならない迫力を醸し出している。また、懐かしい電話機の数々や初期のコンピューターに加え、電話線の敷設や局舎の建設に関する土木技術の展示もあり、電話網の構築・運用はテクノロジーの総合芸術であることを感じさせた。

▼史料館には10年ほど前に、インターネット技術の展示が追加された。予想していたことだが、このコーナーに国産の機器は少なく、多くが米国製品の展示だった。ただ、技術革新の波に乗り遅れたことを今から嘆いても意味がない。歴史を学ぶ中から、日本の強みと勝ち筋を見つけたいとの思いを強くした。（螺）