▼「この請求書では支払処理ができません」。10月以降、社内の担当者から指摘を受けることがあった。消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が始まったからだ。いったん受け取った請求書について、再発行を依頼するのには心苦しさがあったが、仕方ないと割り切って対応した。

▼1年の世相を漢字1字で示す「今年の漢字」で、2023年は「税」が選ばれた。確かに税にまつわる話題は多く、インボイス制度に関しては賛否両論があった。注目度の点では、現実に即した漢字だといえる。

▼IT業界でも「税」は重要なテーマになった。業務アプリケーションを提供するベンダーを中心に、インボイス制度は大きなビジネスチャンスとなり、関連の製品やサービスの導入が拡大。各ベンダーの業績向上につながっている。

▼とはいえ、電子化やデジタル化が一足飛びに実現したわけではない。企業の間では、紙の請求書に登録番号のはんこを押して対応するケースもあるという。業務を変革するためには地道な一歩の積み重ねが重要になる。インボイス制度は始まったばかり。24年もITベンダーの仕事は忙しくなりそうだ。（鰹）