BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『JRは生まれ変われるか 国鉄改革の功罪』
2023/12/15 09:00
週刊BCN 2023年12月11日vol.1995掲載
問われる地方の本気度
来年春、整備新幹線の開業により、故郷の鉄道路線の運営がJRから第三セクターに移管される。人口減少が著しい地方で、果たして経営が成り立つのかと心配になってしまう。しかし、路線を譲り渡す側のJRもまた、安泰ではない。大都市圏以外のローカル線は大半が赤字体質である。新型コロナ禍による都市部での旅客数減少は「都会で稼いで地方の損失を補填する」というビジネスモデルを崩壊させた。新たな柱の確立は待ったなしの状況だ。
本書はJR7社の事業構造や、政治・行政との関わりなどを分析するとともに、前身である国鉄の分割民営化の過程を振り返り、各社が抱える課題や今後の展望を示している。やはり焦点の一つとなるのは採算性が極めて低いローカル路線の扱いだ。公共交通の存廃は地域住民の暮らしに関わる問題だが、JRにとっても重い経営課題だ。
地方の鉄道路線とは奇妙な存在だ。住民の多くは自動車を使うにもかかわらず、廃止やバス路線への転換には拒否感が生まれる。残したいのであれば使うしかないのだが、利便性が低く使いにくいことは、地方出身者としてよくわかる。それでも、地元がどれだけ本気度を示せるかが未来を左右するのかもしれない。(無)
『JRは生まれ変われるか 国鉄改革の功罪』
読売新聞経済部 著
中央公論新社 刊 1980円(税込)
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