BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『循環経済入門』

2023/11/17 09:00

週刊BCN 2023年11月13日vol.1992掲載

半世紀の課題は経済で解決せよ

 東京臨海部の埋め立て地の一部は、「夢の島」と呼ばれている。この地はかつて廃棄物の最終処分場として利用され、「ごみの島」だった歴史も持つ。その後は公園として整備されている。

 緑あふれる夢の島を見ると、ごみの削減という点では私たち人間も一定の進展を遂げてきたように感じられる。しかし、リサイクルの奨励といった従来の環境政策は、人間の日常生活にとって厄介なものである廃棄物をどうするかという、いわば対症療法であり、近年盛んに叫ばれている「持続可能な社会」を実現するには不十分だ。根本的な解決への道筋として示されているのが、限られた資源を循環的に使い続けるプロセスの中で付加価値を生み出し、経済的にも成長していく「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行である。

 循環経済を目指すにあたり、本書で示されている重要なポイントの一つが、ものの生産・流通といった“動脈産業”と、廃棄物の回収・処理を担う“静脈産業”の連携だ。この部分はデジタル技術による最適化の余地が大きい。半世紀を経て未だ解決に至らない廃棄物の問題では、道徳的な啓発以上に、経済的なインセンティブをどう社会に組み込んでいくかが重要となる。(螺)
 


『循環経済入門』
笹尾俊明 著
岩波書店 刊 1012円(税込)
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