▼先日、「ジャパンモビリティショー」の会場へ足を運んだ。前回までは「東京モーターショー」の名称で開催されていた見本市で、今回は自動車だけでなくドローンやロボットに関連した企業や団体など475者が出展。11日間に百万人以上が訪れたイベントは、国内最大の展示会と呼んで差し支えないだろう。

▼車のデジタル化により、自動車業界とIT業界の距離は縮まっていると言われることが多い。しかし、展示会場を眺めると、テクノロジーの見せ方については両業界に大きな違いがある。IT業界の大型展示会を訪れると、とにかく目に飛び込んでくるのは、パネルに細かな文字で書き込まれた説明文の嵐だ。それに対して自動車業界は、高度で複雑な先端技術であっても、それを極力コンセプトカーや模型などに組み込み、文字ではなく”もの”に語らせようとする傾向にある。

▼もちろん、形を持つ完成車こそが商品である自動車と、業務効率化や生産性向上がユーザーの価値となるITを単純に比べることはできないが、IT業界にはややもすると、形のないものをいっそう抽象的に語ることを美徳とするきらいがある。隣の業界から学べることは多い。（螺）