今日は何の日

<今日は何の日>10月30日(1938年)『ラジオドラマ「宇宙戦争」の放送』

2023/10/30 09:00

週刊BCN 2023年10月30日vol.1990掲載

「ニュース形式のドラマでパニック」のウソ

 「番組を中断して、インターコンチネンタルラジオニュースから臨時の速報です」。音楽の演奏を中継していたラジオ番組が止まり、火星でのガス爆発が観測されたことを告げる。番組はいったん中継に戻るが、再びアナウンサーが割って入り、落下した隕石とみられた物体から異形の生物が現れ、人間を熱線で殺害したという情報を緊迫した口調で伝える……。

 H・G・ウェルズ原作、オーソン・ウェルズ主演のラジオドラマ『宇宙戦争』は、臨時ニュースの形式を模して今から85年前に放送された。これを聞いた大勢のリスナーが本物のニュースと勘違いし、逃げ惑う人やショックで発作を起こす人などで全米がパニックになったと言われることが多い。放送というメディアの影響力と怖さを伝えるエピソードとしてもよく引き合いに出される。

 しかし現在では、当時パニックを伝えた新聞記事のほとんどが耳目を引くためのでっち上げであり、1938年10月30日の夜、米国に大きな混乱はなかったことが確実視されている。「全米がフェイクニュースに踊らされた」という“定説”自体がフェイクだったのだ。ただ、こんな逸話がまことしやかに語られるほど、オーソン・ウェルズの演技が真に迫っていたのは間違いないだろう。(螺)
 


由来
SF小説『宇宙戦争』(写真は東京創元社の井上勇訳版)を原作とするドラマを米CBSラジオが放送した。異星人襲来を伝えるニュース仕立ての内容で、全米がパニックに陥ったと言われているが……。
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