BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『将棋カメラマン 大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」』
2023/10/27 09:00
週刊BCN 2023年10月23日vol.1989掲載
藤井八冠誕生で盛り上がる将棋界
前人未到の八冠達成…。そんな見出しで大々的に伝えられた藤井聡太さんの偉業。将棋に詳しくなくても、どれほどすごいことなのかと感心するばかりだ。プロ棋士は年間数人しかなれない狭き門で、常人には想像もつかない頭脳の持ち主たちが、し烈な順位戦やタイトル戦を繰り広げている。藤井さんは八冠達成後のインタビューで「まだまだ実力を高めたい」と発言していた。この先どれだけ藤井時代が続くのか、ファンとして楽しみが増えた。本書は、歴代の名棋士たちと深い関係性を築き、対局からプライベートまで撮影し続けてきたカメラマンによる将棋界の歴史書のような1冊だ。昭和の棋士たちの豪放さ、スター棋士が放つ圧倒的なオーラ。秘蔵の写真とともに、棋士たちの能力や人柄を伝えるエピソードの数々は、将棋の魅力をより際立たせてくれている。勝負の世界を一歩引いてレンズ越しに見続けてきたという意味で、読者目線に近いと感じた。収録されている著者と日本将棋連盟の羽生善治会長との対談も、羽生会長の人となりが伝わる温かな内容だ。
将棋はAIによる研究が主流となり、藤井八冠やライバル棋士たちは新しい戦法を生み出している。AIの勝利予想値に一喜一憂して観戦を楽しむ日々は続きそうだ。(緑)
『将棋カメラマン 大山康晴から藤井聡太まで「名棋士の素顔」』
弦巻 勝 著
小学館新書 刊 1320円(税込)
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