▼日本と中国が日中平和友好条約を締結し、両国の国交が正常化して8月で45周年を迎えた。これまでにさまざまな階層で交流が進んでいるが、新たな火種がくすぶっている。東京電力福島第1原発で始まったALPS処理水の海洋放出である。

▼日本側は、処理水の海洋放出は国際原子力機関の国際安全基準に合致していると主張しているが、中国側は猛反発。中国からの電話が日本の公的機関や店舗に相次ぐ事態になっている。海洋放出に反対するのは自由だが、無関係の一般市民を巻き込むのは道理に合わないと言わざるを得ない。

▼迷惑電話に対し、東京都は9月1日に自動応答による対応を始めた。海洋放出の安全性に加え、中国の原発の状況も説明している。電話の掛け手がどう感じるかは不明だが、日本側に電話して一方的に意見を述べても無意味だと分かってもらう点では、有効な対策だと言える。

▼中国では日本に対する厳しい意見が渦巻く。日本への電話に加え、インターネットには過激な投稿や偽情報が出回り、ITが間違った方向に使われている面は否めない。冷静な対話によって、幅広い階層で関係が改善することを願っている。（鰹）