BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ゲーセン戦記 ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』

2023/06/30 09:00

週刊BCN 2023年06月26日vol.1974掲載

苦しいゲームセンターの経営事情

 本書は、ゲームセンターの経営者である著者の視点から、ゲームセンターの栄枯盛衰の歴史を紹介する。著者の経営するゲーセンミカドは、国内外からゲーム愛好者を集める有名店。直近ではコロナ禍による規制や外出自粛によってゲームセンターは逆境に立たされてきたが、ゲーセンミカドはそうした危機の中、経営を続けてきた。

 本書によれば、1989年には全国に約2万2000店舗あったゲームセンターは、19年には約4000店舗にまで減少。コロナ禍以前から、ゲームセンターは苦境にあった。要因はさまざまあるが、無料のスマホ向けのゲームの流行による若い世代からの支持の喪失や、ゲーム機の高性能化による単価の高騰など、ゲームセンターを取り巻く環境は厳しい。

 そうした中、ゲーセンミカドでは動画配信サイトの活用やグッズを展開。クラウドファンディングといった施策に加え、「場」の価値を提供できることを強みにイベントの開催にも力を入れ、「できることはなんでもやった」という。その結果、根強いファンの獲得に成功し、厳しい状況を切り抜けてきた。苦しい経営状況の中で、生き残りをかけた戦略は、一見の価値がある。(石)
 


『ゲーセン戦記 ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀』
池田稔 著 ナカガワヒロユキ 聞き手・構成
中央公論新社 刊 946円(税込)
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