BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『女ことばってなんなのかしら?「性別の美学」の日本語』

2023/06/16 09:00

週刊BCN 2023年06月12日vol.1972掲載

誰もが対等に暮らせる社会を目指して

 世間では、ジェンダーについての議論が活発だ。男女間格差をどう是正するかであったり、あるいは性別の自認についてどう扱うかであったり、多様性社会に向けて変化しつつある現代では避けて通れない話題だろう。最近では、4月に開業した東急歌舞伎町タワー(東京)の「ジェンダーレストイレ」が話題となったことで、新たな価値観が浸透しようとしているのを実感した。

 本書では、語尾に「~だわ」や「~かしら」などをつけるような「女ことば」をきっかけに、男性と女性の間のジェンダー格差について言及している。著者は、ジェンダー格差においては女ことば自体ではなく、断定を避けたり、もってまわった言い方をしたりというように、自己主張を避けることで力関係が反映されてしまう「女らしい言い回し」をすることが問題だと述べている。

 「男は外で働いて、女は家を守るもの」という固定概念はほぼ過去のものとなりつつあるが、「男だから」「女だから」といった偏見はいまだ存在している。社会の誰もが対等に生きていく社会を実現するためには、みんなが「女らしい言い回し」を止めて、自分の考えをきちんと伝えようとすることが大事なのかもしれない。
(留)
 


『女ことばってなんなのかしら?
 「性別の美学」の日本語』
平野卿子 著
河出書房新社 刊 946円(税込)
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