▼本紙記事でもお伝えしている通り、国内IT企業の業績はおおむね好調だ。2022年はコロナ禍明けを見込んだ回復期だったと捉えることができるだろうか。大手ベンダーの決算にもその様子が表れている。経営者らの発言に耳を傾けると、今年後半の国内IT市場では堅調な需要が続くとみている企業が多いようで、好況は一時的な傾向ではないらしい。

▼一方、リストラの報道が絶えないことからもわかるように、米国のIT大手の業績には陰りが見える。米アマゾン・ドット・コムは4月27日に行った決算説明会で、4月のクラウドサービス部門の成長率が1月から3月に比べ減速していることを認め、同社の株価は急落した。景気の先行きを懸念する顧客がIT支出を絞ったことで、クラウド最大手であっても厳しい状況に置かれている。

▼とはいえ、このような環境下でこそ、次を見据えた方角に投資が向かうのが米国だ。生成AI、衛星通信、量子コンピューティングなどの分野は巨額の資金を集めている。景気回復期には、まかれた種が巨大な果実となって返ってくる可能性がある。国内のIT市場は、厳しい米国に比べて余裕のあるタイミングだ。成長投資の好機ではないか。（螺）