▼昨今の半導体不足はサプライチェーンに大きな混乱を及ぼした。IT機器はもちろん、自動車、エアコン、給湯器、住宅設備など、電気の通る製品のほぼすべてに影響があったのではないかと思われるほどだ。IT業界では部材理由による遅延はおおむね解消されたという声も聞かれるようになったが、自動車や白物家電では、出荷の正常化は来年以降という見方が強い。

▼半導体業界はさぞかし好景気に沸いているだろうと思いきや、半導体製造受託最大手、台湾ＴＳＭＣの今月10日の発表によると、同社の3月の売上高は前年同月比15・4％減と大きく落ち込んだ。同社はIT機器向けの先端半導体で業績を伸ばしてきたが、コロナ特需の反動減でIT機器の販売にブレーキがかかり、この領域では半導体の在庫に余剰が生まれているからだ。

▼「シリコンサイクル」と言われるように、半導体は数年周期で好不況を繰り返すことを宿命づけられたビジネスだ。半導体大手各社は、悪い状況下であっても恐れることなく、数千億から兆円単位の投資を継続する。日本は2ナノメートル世代の先端半導体で世界と勝負する決断をした。市況に動じず事業を支え続ける胆力が求められる。（螺）