BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『面白すぎて時間を忘れる雑草のふしぎ』

2023/04/14 09:00

週刊BCN 2023年04月10日vol.1964掲載

雑草の強さから学ぶ

 田舎に住んでいた子どもの頃、登下校は徒歩が主流だった。私は自宅から学校までをてくてくと15分ばかり歩いて通学していたが、毎日同じ景色の道をただ歩くだけの時間が暇で仕方がなかった。当時、スマートフォンは普及していなかったし、携帯電話の所持も許されていなかったため、できることが限られていたからだ。そんな登下校時、やっていたことがある。それは、道端に生えている植物を観察することだった。

 春になるとタンポポやオオイヌノフグリ、ヒメジョオンなど、さまざまな種類の雑草が生えてくる。これらの可憐な花を咲かせる雑草の中で、私の興味を最も引いたのは、本書でも紹介されているスギナだ。

 スギナは、抜いてもちぎっても、どんなにちょっかいを出しても必ずまた生えてくる。本書で「時代遅れの強さを体現」していると評されるスギナは、地面の深いところで地下茎を力強く張り巡らせている。古生代から現代までの長い間、存続できているのはこの強さのためだろう。

 著者は「雑草とひとくくりにされることが多いが、実際には、雑草には多種多様な種類がある。そしてそれぞれの雑草が、それぞれの戦略を組み立てている」と語る。スギナのように、時代に左右されることない自分だけの強さを探してみたい。(留)
 


『面白すぎて時間を忘れる雑草のふしぎ』
稲垣栄洋 著
三笠書房 刊 847円(税込)
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