AI活用の神髄はビジネス変革にあり

　NECのAI専門家36人の知見を集めて執筆したのが本書だ。400ページ近いボリュームがあり、AIの基礎的な知識からビジネスへの応用に至るまで、AIの活用を網羅的に書き記してある。

　AI活用を考えるビジネスパーソン向けの内容を軸に、今のAIの「得意なこと」「苦手なこと」を分かりやすく整理。AIの技術が日進月歩で進化しても、AIの特性をしっかり抑えていれば、期待から大きく外れることはなく、投資も無駄にならないと説く。

　ユーザー企業のシステム構築を担うNECらしい視点で、既存のビジネスや業務にAIを取り入れるための組織論や必要とされるスキルセット、人材育成に多くのページを割いている。AIの技術的な側面を深く掘り下げるのではなく、むしろAIを企業活動に取り入れるためのビジネスや組織の変革、またこれらを推進するプロジェクト管理のノウハウこそ、AI活用の神髄だと指摘する。

　実際、AIが人間の知的能力を超えて、人間の生活に大きな変化がおこる「シンギュラリティ」は、2050年に至っても実現できる可能性は50％と言われるほどハードルは高い。裏を返せば現行AIの延長線上でビジネス変革に今から取り組んでも「遅すぎる」ことはなさそうだ。（寶）
 

『AIビジネス大全』
秋元一郎　編著　AIビジネス大全執筆チーム　著
プレジデント社　刊　2750円（税込）