BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『通信地政学2030 Google・Amazonがインフラをのみ込む日』
2023/02/03 09:00
週刊BCN 2023年01月30日vol.1955掲載
通信会社が牛耳る市場に黒船
電話会社のビジネスに代表される電気通信事業は、社会インフラとしての高い公共性がある一方、独占的な状態が発生しやすい。そのため、競争促進と利用者保護を目的として、通信事業者の活動を規制する各種ルールが法令で定められている。1980年代以降は通信の自由化が段階的に進み、新たなプレイヤーの参入が相次いだ。ただ、通信網を自前で保有・運用できる企業は限られている。自由化以降、「大競争時代」を迎えると何度も言われてきた通信業界だが、競争といってもどこか「コップの中の嵐」のような、限られたパイを食い合う争いに見える場面が少なくなかった。
しかし今、「コップの外」からの黒船が日本の通信市場に到来しようとしている。その正体は、米Googleや米Amazonが世界の大陸間に敷設する海底ケーブルだ。彼らが自前のネットワークを通じて、クラウドと通信サービスを合わせて提供することで、既存の通信事業者の領分へ侵出しつつある。通信インフラを巨大IT企業に依存することにリスクはないのか。そして、緊張を高める国際情勢はインターネットのガバナンスにどんな影響を与えるのか。デジタル覇権を争う戦場となりつつある通信市場の、向こう10年を見通すための一冊。(螺)
『通信地政学2030 Google・Amazonがインフラをのみ込む日』
堀越功 著
日経BP 刊 2200円(税込)
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