BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『テキヤの掟 祭りを担った文化、組織、慣習』
2023/01/27 09:00
週刊BCN 2023年01月23日vol.1954掲載
時代の流れとはいえ…
初詣に訪れた寺で、たい焼きを提供している露店を見かけた。昨年は大判焼きを出していた気がするものの、焼き台の前に立つ老人男性は昨年と同じ人だ。愛想もなく黙々と商品を作り続ける姿は、年季の入った和菓子職人のようなたたずまいだが、老人はおそらく「テキヤ」なのだろう。現在、テキヤは存続の危機にあるという。各地で施行された暴力団排除条例を受け、反社会的勢力として規制を受けているからだ。ただ、著者はテキヤはあくまで商売人であり、暴力団などとは無関係であるとする。
この主張は納得できる。ただ、反社ではないとしても、アンダーグラウンドな要素があるのも確かだ。だからこそ、過去に罪を犯した人など社会に馴染めない存在を受け入れる「セーフティネット」としての要素があると著者は訴えるが、曇り一つない「清廉潔白」が求められる現代において、アングラな部分を抱えたまま存続していくことは難しいようにも思う。
テキヤがイベント業者や飲食業にとって代わられれば、私たちの親しんだ祭りの風景は大きく変わるかもしれない。それが時代の流れとはいえ、いささかさみしいものがある。あの老人もいつまで露店を続けられるのだろうか。(無)
『テキヤの掟 祭りを担った文化、組織、慣習』
廣末 登 著
KADOKAWA 刊 1034円(税込)
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