「すでに隣にある世界」を知る

　言葉としての認知度は十分にある“メタバース”だが、果たして盛り上がりは本物なのか。半信半疑な人は本書を読めば、新たな世界が着実に広がっていることを実感できるかもしれない。

　焦点を当てているのは実際にメタバースで働いている「アバターワーカー」だ。現在、仮想空間では接客やイベント、表現の場として、新たなビジネスが続々と誕生しており、さまざまな立場の働き手が試行錯誤を重ねている。

　アバターワークによるメリットは単に住んでいる場所や年齢を問わず働けるという「制約からの解放」だけではない。例えば、医療現場ではリアルより匿名性の高いアバターコミュニケーションのほうが話しやすいなどの効果が確認されており、期待値は高い。小売業でもリアル店舗やECとは異なるメタバースならではの魅力を日々発掘しており、すでに多数の成功事例が出てきている。

　本書では新たな働き方の報酬やコスト、イベントの運営体制、作法なども示されているので、個人・法人を問わず、これから新たな世界に足を踏み入れようとしている人には特に刺さるだろう。「いつかくる世界」ではなく「すでに隣にある世界」を理解する手がかりになるはずだ。（雀）
 

『アバターワーク メタバースが生み出す時間、場所、身体から解放された働き方』
株式会社 往来　著
エムディエヌコーポレーション　刊　1980円（税込）