BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『台湾に何が起きているのか』
2022/10/28 09:00
週刊BCN 2022年10月24日vol.1943掲載
台湾危機と歴史背景が分かる一冊
産経新聞出身で、中国・台湾ウォッチャーの福島香織氏の最新刊。前半部分はここ数年の中国の台湾に対する異常なまでの軍事的威圧と、武力侵攻への危惧に関して日米中台の要人や識者の発言を分かりやすくまとめている。後半部分は日台の複雑な歴史を解説し、読者の台湾への理解をより深める構成となっている。ロシアのウクライナに対する武力侵攻とタイミングを合わせるかたちで、中国の台湾侵攻がまことしやかに噂された背景や、台湾情勢について強硬な姿勢を示している中国の習近平国家主席の置かれた状況を詳しくリポート。さらに故・安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事」の言葉を借りるかたちで、否が応でも関係を持たざるを得ない日本と日米同盟への影響を説く。
後半の歴史編では、下関条約によって台湾が清朝から日本へ割譲されてから敗戦までの50年間と、その後の国共内戦で敗退してきた蒋介石・国民党による統治。1987年の台湾民主化と自国意識の台頭を描く。ただ、実際に中国による台湾侵攻が発生したとき、日本がどう動くべきかまで本書で十分に深掘りされているとは言えない。これは国内での議論が深まっていないことの裏返しなのかも知れない。(寶)
『台湾に何が起きているのか』
福島香織 著
PHP新書 刊 1111円(税込)
- 1