BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『92歳総務課長の教え』
2022/06/10 09:00
週刊BCN 2022年06月06日vol.1925掲載
勤続66年の大先輩の教え
「ギネス認定、世界最高齢の総務部員」として話題になっている人がいる。それが本書の著者、玉置泰子さんだ。1930年大阪生まれ。25歳のときに地元のネジ専門商社・三興鋲螺(現・サンコーインダストリー)に入社する。40歳で総務課長に抜擢され、勤続66年を超えた現在もフルタイムで勤務している。本書は、長く幸せに働くための秘訣を集めたものだが、結論から言うと、仕事術としては当然の事柄しか書かれていない。掃除や挨拶といった凡事を徹底すること。前倒しを心がけること。タスクに優先順位を付けてToDoリストを作成すること。失敗を他人のせいにしないこと。笑顔を絶やさないこと……前書きから後書きまで、すべてが正論だ。しかし66年の経験から積み重ねられた正論が淡々と語られることで、それらの実践がいかに難しいか、読者の脳裏にはかえって重みをもって深く刻まれていく。
皆勤表彰や、全員参加の飲み会など、現代の働き方にそぐわない“昭和”のカルチャーには否定的な考えを見せている点も印象深い。時代の潮流を正確に捉え、柔軟に価値観を変化させられる著者だからこそ、上から目線を感じさせることなく爽やかに仕事術を説くことができるのだろう。(螺)
『92歳総務課長の教え』
玉置泰子 著
ダイヤモンド社 刊 1540円(税込)
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