北斗七星
北斗七星 2022年2月28日付 vol.1912
2022/03/04 09:00
週刊BCN 2022年02月28日vol.1912掲載
▼1990年、イラクは石油政策で対立する隣国クウェートへ軍事侵攻した。現地の惨状を見たというクウェート出身の15歳の少女・ナイラは、米国の人権集会に出席し、「イラク兵は病院で新生児を保育器から取り出し死なせていた」と涙ながらに証言。西側諸国の世論は「イラク討つべし」へと大きく傾いた。
▼よく知られていることだが、ナイラは侵攻当時クウェートにはおらず、証言は「反イラク」を扇動するためクウェート側の意向によって行われた虚偽の内容だった。しかしそれが暴露されるまでの間、政治家やメディアはナイラ証言を幾度となく引用。世界の圧倒的な反イラク感情に押されながら、91年1月に多国籍軍はイラク領内を爆撃。湾岸戦争が始まった。
▼そして今、ソーシャルメディアを活用すれば、かつてないほど〝低コスト〟でフェイクニュースを拡散できる時代になった。しかしそれと同時に、テクノロジーの進化によって、複数のニュースソースにアクセスするなどして一つの事象を多面的に捉えることも容易になったはずだ。「この情報は本当だろうか」と立ち止まるリテラシーを、湾岸戦争から30年の間に人類が高めてきたと信じたい。(螺)
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