BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『ルールの世界史』
2022/02/11 09:00
週刊BCN 2022年02月07日vol.1910掲載
ルールは守るものか、作るものか
欧米諸国に比べて、日本は「ルールづくり」に弱いと言われることがある。国際標準の各種規格策定は歴史的に欧州が中心だったし、市場競争によって形成される「事実上の標準」について言えば、現代では米国の勢いが圧倒的だ。近年、自動車業界ではエンジンから電気モーターへと、まさにルールが変わろうとしているが、この潮流も海外主導で引き起こされた感がある。これからの我々に求められるのは、新しいルールを作っていく能力ではないか。そのような、ルールを変えたいと思う人に向けて法律家が書いたのが本書である。実例として、かつて世界で行われたさまざまなルールチェンジの歴史が挙げられており、例えば19世紀の英国のフットボール界では、「相手のすねを蹴ってはいけない」というルールを設けるかどうかで激論が交わされていた。議論は決裂したが、これが結果的にサッカーとラグビーという二つの球技の誕生につながったという。
ルールを破る人にも何かしらの理由がある。著者は、何が正義かを決めることにあまり意味はなく、ルールには「より良いものに変える余地」があることに気付くのが重要と説く。“賞味期限切れ”になっているルールが身の回りにないか、気を配りたい。(螺)
『ルールの世界史』
伊藤 毅 著
日本経済新聞出版 刊 1980円(税込み)
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