BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『武器としての組織心理学』

2021/11/05 09:00

週刊BCN 2021年11月01日vol.1897掲載

「悪性の嫉妬」と「良性の嫉妬」

 “働く人の悩みの9割は人間関係に起因する”と言われるほど、人と人のコミュニケーションは難しく、面倒なものだ。ただ、逆の見方をすれば人間関係が改善すれば、悩みの大部分は解決し、仕事におけるパフォーマンスもよくなる。本書『武器としての組織心理学』は、厄介な人間関係を逆手に取ることで、組織のパフォーマンスを最大限に引き出すことに主眼を置いている。
 

 例えば、「嫉妬」は「七つの大罪」の一つに挙げられるほど、人間の感情の根源であり、ときに他人の足を引っ張るなどの非合理的な行動を促す。こうした「悪性の嫉妬」がある一方で、「良性の嫉妬」も存在する。悪性の嫉妬は敵意や憤怒につながりやすく、「あいつさえいなければ……」と、排他的な行動を起こしやすいのに対し、良性の嫉妬は「うらやましい。自分もああなりたい。あの人と一緒に仕事をしたい」と、羨望や協力的な行動に結びつく。本書では、「良性の嫉妬」をうまく利用することでより強い組織にする手法を指南する。

 日本の会社組織は、長らく続いてきた年功序列が崩れ、実力のある若い人がリーダーに立つ場面も増えた。部下となった年長者が若手リーダーの足を引っ張るような心理状態では組織として立ち行かなくなってしまう。老若男女、多様な出自の人たちがリーダーに協力し、チーム全体でよりよいパフォーマンスを発揮するにはどうしたらよいのか。組織心理学の専門家である著者の山浦一保氏が科学的根拠に基づいて分かりやすく解説している。(寶)


『武器としての組織心理学』
山浦一保 著
ダイヤモンド社 刊 1650円(税込)
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