BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『フューチャリストの「自分の未来」を変える授業』
2021/10/29 09:00
週刊BCN 2021年10月25日vol.1896掲載
フューチャリストのメソッドを個人のキャリアに生かす
フューチャリストという耳慣れない肩書を持つ著者は、インテル、IBMへの勤務歴があり、フューチャリスト歴は実に25年に上る。エンジニアやデザイナーとしての教育を受け、大学教授やSF作家の顔も持つ。フューチャリストの具体的な仕事の内容は何か。企業や組織が、先を見通せない中で難しい決断をする際に、「情報を集め、分析し、想定される未来の姿を描く専門家」として支援することだと本書では定義づける。社会科学、情報技術、文化史、経済学などのさまざまな資料やデータを基に、未来に起こりそうなこと、さらには自分たちにとっての最良の未来を導き出して、そこに至る具体的なステップも提示する。「要は社内なら経営企画、社外ならコンサルがやっていることだろう」と言いたくなる気持ちは分からないでもないが、新しい概念を無理やり既存の枠組みにはめ込んで理解しようとすることで、イノベーションを阻害することもある。
フューチャリストが企業に提供してきたメソッドを、個人の生き方にも活用する自己啓発本というのが本書の位置づけだ。不確実性の時代と言われる現代においては、企業経営の将来だけでなく、個人のキャリアも先を見通すのが難しい。自分のあるべき未来とそこに至るステップをどう定義して実行していくのか、実績のあるメソッドに触れてみるのも悪くはない。フューチャリストの価値も、まずは読んでみてから判断しても遅くないだろう。(霹)
『フューチャリストの「自分の未来」を変える授業』
ブライアン・デビッド・ジョンソン 著 桜田直美 訳
SBクリエイティブ 刊 1925円(税込)
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