▼今年のお盆は何の憂いもなく帰省してゆっくり墓参りでもしよう、と多くの人が考えていたことだろう。現実はまだまだ先が見通せない。昨年に比べれば飛行機や新幹線の利用は増えたが、新型コロナ禍前と比較するとお盆期間の国内線利用者は約4割にとどまっている。

▼ご先祖様にはそれも関係ない話だ。迎える時は早馬に見立てたキュウリに乗ってもらい、あの世には牛を模したナスに乗ってゆっくり戻ってもらう。東日本を中心に、夏野菜でつくる精霊馬の風習が広く残る。

▼農水省の発表によれば、今年は天候に恵まれたためキュウリもナスも生育が良好で、8月は安値で推移しているという。消費者にとっては旬の野菜を存分に味わう環境が整った。

▼農家にとっては収穫後の選別や出荷作業がピークを迎え大忙しの時期である。キュウリやナスなどの果菜類の選別は手作業で行われることも多い。ディープラーニングによる画像認識でこれを効率化しようという試みも見られる。人は動かなくてもモノの流通は活発だ。生産や流通をいかにテクノロジーの力で現状に最適化していくかが従来以上に重いテーマとして浮上している。（霹）