BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ワイルドサイドをほっつき歩け─ハマータウンのおっさんたち』

2020/06/19 09:00

週刊BCN 2020年06月15日vol.1829掲載

英国社会のリアルを映し出す

 ヤフーニュースと本屋大賞が共催する「ノンフィクション本大賞」で昨年、大賞を受賞した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者・ブレイディみかこ氏によるエッセイ集。中学生の息子(と著者の親子)を主人公とした前作とは対照的に、本作の主役となるのは「おっさん」たちだ。英国で暮らす労働者階級出身のおっさんたちの仕事や恋愛、またEU離脱や排外主義といった社会の変容に揺られながらも時に立ち上がり対抗し、ありのままに生きる姿を描き出す。中高年の「おっさん」たちというと何かと世間の厄介者扱いにされがちだが、本書に出てくる中高年たちのまっすぐな生き様には心を打たれるものがある。

 本書は2章構成。おっさんたちが登場するエッセイ集が第1章で、第2章では現代の英国の世代と階級、そしてお酒事情について解説している。著者の忌憚のない言葉によって分かりやすく説明され、英国のリアルな社会事情を理解する上でも本書は一読の価値がある。(宙)
 


『ワイルドサイドをほっつき歩け
 ─ハマータウンのおっさんたち』
ブレイディみかこ 著
筑摩書房 刊(1350円+税)
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