BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』

2019/01/23 09:00

週刊BCN 2019年01月14日vol.1759掲載



世界はどんどん悪くなっているのか

 ショッキングな事件が報じられるたびに、私たちは決まってこんなフレーズを口にする。「物騒な世の中になってきましたね」。しかし、昭和と平成の凶悪犯罪件数を統計で振り返れば、総じて昔のほうが「物騒」であったことが分かる。

 同じことは日本社会の見方だけでなく、世界に関しても言える。だが、本書で紹介されたデータによれば、これらの見方は誤り。もちろん、世界には目を覆いたくなるような問題が多数残っており、解決しなければならない。しかし、全体でみれば良くなっている世界のことを、多くの人は「世界はどんどん悪くなっている」と思いたがる。

 著者は、人が本能的にもつ思考パターンを示し、思い込みが発生するメカニズムを明かすとともに、ファクト中心の思考・行動を実践することを推奨する。

 本書を読み進め、「世界はどんどん良くなっている」ことを理解するほどに、心苦しくもなる。自分がこれまでファクトに目をやることなく、いかに思い込みで発言や行動をしてきたか、思い知らされるからだ。(螺)
 


『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』
ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 著
上杉周作、関 美和 訳
日経BP社 刊(1800円+税)
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