BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『金融に未来はあるか──ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実』
2017/11/15 09:00
週刊BCN 2017年11月06日vol.1701掲載
FinTechによるdisrupt待望論の背景?
バズワードの域を超え、すっかり日本でも有望な成長市場としての認識が定着した感のあるFinTech。市場形成が先行した北米では、FinTechベンチャーは「disrupter」、つまり既存の金融市場をテクノロジーにより破壊し、場合によってはそれまでの市場の支配者を駆逐し得る存在とみられている。これは欧州もほぼ同様のようだ。一方で、日本はかなり事情が違うといっていい。FinTechベンチャーがメガバンクをはじめとする既存プレイヤーと積極的に連携し、規制当局に対するロビー活動なども主導している。FinTech関連の取材をすると、欧米と日本の違いは一体何に由来するのだろうと思うことがあった。
本書は、その疑問に対する答えを考察する際に、大きな示唆を与えてくれた。金融サービスのあり方に関する課題はグローバルで共通のものだろうが、著者の分析は、欧米の巨大金融機関が、その強欲さに見合った大きさの社会的役割を、もはや果たしていないことを浮き彫りにする。(霹)
『金融に未来はあるか──ウォール街、シティが認めたくなかった意外な真実』
ジョン・ケイ 著 薮井 真澄 訳
ダイヤモンド社 刊 (2400円+税)
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