BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『人口と日本経済長寿、イノベーション、経済成長』
2017/03/15 09:00
週刊BCN 2017年03月06日vol.1668掲載
人口減少の悲観的な見方を払しょく
人口が減ると、日本経済は衰退するか。日本が抱える大きなテーマだ。これに対し、著者は明確な「NO」を主張。日本の人口減少にかかわる悲観的な見方を払しょくする。日本は本格的な人口減少時代に突入した。今後、かつてないスピードで人口が減る見通しで、一部では「国家存亡の危機」などと衝撃的な言葉も取りざたされている。国や企業、そして個人にとって、不安が大きくなるばかりだ。
国は「約50年後の2065年に人口1億人を維持する」を目標に、子育て支援や東京一極集中の是正など、人口減少に歯止めをかけるための対策を打っている。しかし、「若い女性が少なくなりすぎたから、たとえ1人の女性が産む子どもの数が増えても、人口減少の趨勢(すうせい)を止めることはできない」と著者は指摘する。
人口が減少するなか、経済成長には何が必要なのか。著者が最も重要視するのは、この部分だ。爆発的な人口増加を生み出した産業革命などを分析する本書を一読すれば、人口減少から日本経済の衰退を導く議論を真っ向から否定する著者の意見にうなずけるだろう。
翻ってIT業界に目を向けたい。最近はAI(人工知能)が注目され、企業は技術開発に注力している。すでに囲碁や将棋のプロを負かす能力を備えるほど、技術の進歩はめざましい。
45年には、AIが人間を支配するという予測もあるが、著者が考える将来像は違う。歴史を振り返りながら、経済成長への道筋を示す著者の意見は傾聴
に値する。(鰹)
『人口と日本経済長寿、イノベーション、経済成長』
吉川 洋 編
中央公論新社 刊(760円+税)
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