BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『こども孫子の兵法』

2016/12/07 15:27

週刊BCN 2016年11月28日vol.1655掲載

2500年前のデータサイエンティスト

 孫子は書物である。

 今から2500年ほど前、中国の春秋時代に書かれた兵法の理論書である。孫子以前の戦(いくさ)の勝ち負けは天の采配によると考えられていた。戦略も戦術もなかった。孫子の著者といわれる孫武は、戦の膨大なデータを収集・分析。データサイエンティストとして勝つための兵法を解析した。それが孫子の兵法というわけだ。

 古今東西、孫子ファンは多い。松下幸之助は丸暗記していたという。ナポレオンも武田信玄もビル・ゲイツも読んでいる。ソフトバンクの孫氏もしかり。多くのビジネスマンが書店のコーナーで手にとる。当然、元は漢文で書かれており、読み下し文付きで解説してあってもなかなか歯が立つものではない。そんなときは本書が役立つ。

 こども向けとしているが、稚拙ということではない。読みやすいわかりやすいということ。それはおとなにも親切。監修の齋藤孝氏はいう。「この本には、生きていくなかで出会うさまざまな場面で、どのように考え、どのように行動すべきかのヒントがつまっている」。サブタイトルに、“強くしなやかなこころを育てる!”とある。おとなにも欲しいスキルだ。

 本書は24のことばを選び出して、やさしく解説している。その一つ、「善く戦う者は、其の勢は険にして、其の節は短なり」。こども訳では「地道な努力で、いざというときのために力をためておこう」となる。さらに噛みくだいた解説がついており、理解を深めてくれる。

 読みこんで損しないだろう。(蓼)

『こども孫子の兵法』
齋藤 孝 監修
日本図書センター 刊(1500円+税)
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