▼米大統領選投票日前夜、優勢が伝えられていたヒラリー・クリントン氏を支援するために著名なミュージシャンたちが演説会場に駆けつけた。そこにブルース・スプリングスティーンの姿があった。

▼出所は忘れてしまったが、学生時代、故カート・コバーンのインタビュー記事を読んでいて、「スプリングスティーンはライブ会場近くの製紙工場の臭いが嫌だといって公演をキャンセルしたことがある。労働者のヒーローなんかじゃない」という趣旨の発言を目にしたことを思い出した。話の真偽はともかく、世間の目とはそういうものだとはいえるのかも。

▼リベラルなセレブたちや多くのマスコミはこぞってクリントン氏支持を表明したが、「賢く」、「正しい」ことを言う人たちのメッセージは米国民にどう受け止められたか。

▼事前の報道に反して、トランプ氏は過去の共和党候補と比べてマイノリティの支持率が低いわけではなかったことや、必ずしも低所得の白人層の圧倒的な支持を受けたわけではないことも明らかになってきている。トランプ大統領誕生の背景はそう単純ではなさそうだ。現実を受け止めつつ、冷静に分析する必要があろう。（霹）