BOOK REVIEW
<BOOK REVIEW>『サヨとコウの出発』
2016/09/28 15:27
週刊BCN 2016年09月19日vol.1645掲載
一歩踏み出したい人に
変わりたいと願いながら周囲のムードに流され一歩を踏み出せない。そんな境遇にある人は多いはずだ。本書はこんな葛藤と戦う女子高生の「サヨ」と、自分の夢にまっすぐ向かう大学生の兄「コウ」の二人が繰り広げる物語を、窪之内英策さんのえんぴつを使ったイラストと、糠塚まりやさんの脚本で表現した作品だ。ソフトウェア会社のヴァル研究所が乗り換え案内サービス「駅すぱあと」の動画広告として制作し、YouTubeの動画視聴100万回を超えたスペシャルムービーを書籍化した。乗り換えを検索する際、「出発」と「到着」を入力するが、これと、サヨとコウの新たな出発とその後の人生をかけて物語を構成したようだ。
窪之内さんは、「ツルモク独身寮」で知られる漫画家。色鉛筆とマーカーを用いて描き出される繊細なタッチは、若い女性から支持を得ている。糠塚さんは、広告会社のプランナーのかたわら、オムニバス映画「らもトリップ」など自主映画の脚本・監督を手がける。ムービーを書籍化するにあたり、「観る」作品を「読む」作品へと変換したという。動画では味わうことができない、鉛筆の筆致や消した跡など作品をより深く体感できる。書籍では、新たに描き下ろしのイラストも追加されている。
さて、サヨは自由奔放なコウをみて、どう変わったのか。コウがサヨに送ったメッセージとは。若い世代だけでなく、ビジネスの荒波にのまれ自分を失いかけている大人にも感動を与えることだろう。駅すぱあとのアプリで「出発地」に「私」と入力すると、このムービを観ることができる。(吾)
『サヨとコウの出発』
窪之内英策 絵
糠塚まりや 文
PARCO出版 刊(1200円+税)
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