BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『ウチの会社電気売るんだってよ』

2016/03/24 15:27

週刊BCN 2016年03月21日vol.1621掲載

電力小売を始めるための指南書

 4月1日に電力小売が全面自由化となる。10電力会社の発送電一貫体制・地域独占は、2011年3月11日の東日本大震災で電力需給に不安を残したことから、15年から20年まで3回に渡り制度改正を繰り返す。小売の自由化は、制度改正の「総仕上げ」といわれるほどの衝撃だ。

 実は、1995年に規制緩和の一貫で「電気事業法」を改正し、卸電気事業への参入を自由化している。JX日鉱日石エネルギーなど独立系発電事業者(IPP)が参入。99年の改正でも、特別高圧部門の小売が自由化され、特定規模電気事業者(PPS)としてダイヤモンドパワーなどが電力供給を開始した。だが、震災前の10年時点で、IPPのシェアは8%弱、PPSが3%弱と電力自由化の機運がしぼんでいた。

 本著はそんな電力の歴史を読み解くところから始まり、「小売電気事業者」になるための方法を「10のポイント」にまとめた。今回の自由化で、一般家庭まで広がる小売の市場は、情報サービス産業の2分の1程度、年間7兆5000億円が見込まれる。それだけに、通信事業者など民間企業の参入が相次いでいるのだ。

 今後、電力小売を始めたい事業者向けに、検討ポイントを次のように解説する。まずは、電気料金メニューを検討し、家庭を含めた電力を使う顧客を想定して獲得方法を練り、申し込み手続や料金計算などに関連するシステムをつくる。次に料金回収や引越時などの離脱防止策、電気の安定調達を図る、という具合だ。ここまで説明すればおわかりだろう。小売業者の参入が増えれば、ITシステム需要も伸びる。ITベンダーには、チャンス到来といえそうだ。(吾)


『ウチの会社電気売るんだってよ』
電力小売ビジネスを始めるための10のポイント
関電システムソリューションズ
ビジネスコンサルティング部 編
日本電気協会新聞部 刊(1800円+税)
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